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CG MAKING

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今際の国のアリス シーズン2

2022年12月Netflixオリジナルシリーズ作品【VFX制作】

Acesをベースとしたカット制作

Acesベースとしたシーンリファードのワークフロー

Q.

それでは最後にコンポジットワークについてコンポジットリードの谷 雄介氏にお話しを伺った。まずは今回のコンポジット環境の概要について教えてください。

今回は全体的にAcesのカラー環境をベースとしたHDR対応でコンポジットが行われています。最終的には4K解像度で出力されています。コンポジットのボリュームは協力会社の分も合あわせると、約2000カット前後の作業ボリュームになっています。使用しているツールはNuke12また13でコンポジット作業を行い、カットのチェックにはDaVinciResolveを使っています。コンポジットで使用した素材はMayaのV-Rayから出力された素材とUE4から出力された素材、撮影プレートを使用しています。 コンポジットリード 谷 雄介 コンポジットリード 谷 雄介

弊社では、Acesを使ったワークフローを採用しています。Acesはオープンソースのカラーマネージメントをするデータなのですが、映画やテレビの制作において画像データを正しく表現するための色彩管理システムになっています。Acesを採用している理由としては、色だったりデータの管理が容易になり、技術的な部分でもクリエイティブな部分に専念することができるため、高品質なコンポジットを制作することができます。また作業に不適切な環境下でも作品の色を損なうことがないというのも理由のひとつです。
Acesを使ったワークフローを説明すると、弊社ではシーンリファードという体制で作業を行なっています。シーンリファードでは、ディスプレイに依存しない作業用カラースペースへの調整が主になり、撮影素材やUE4やMayaからレンダリングされた素材、テクスチャの素材など、色空間の設定がそれぞれ違うソースを一度Acesに変換して作業するという体制をとっています。Acesに全て統一することで、全ての素材を同じ色空間で作業できるようになります。作業するモニターも作業者全員HDR対応に調整されたColorEdgeCG247Xを適切なキャリブレーションを施した状態で使用しています。

  • ※シーンリファードのワークフロー図

UE4特有のレンダーパス

Q.

背景のCGの一部にUE4を使うことで、コンポジット側の作業にこれまでと変わったことはありますか。

コンポジットで扱う素材としては、V-Rayから出力されたAOVs(レンダーパス)、UE4からレンダリングされたAOVs、撮影プレート、実写で撮影されたエフェクト素材などがあります。V-Rayから出力されたAOVsとUE4から出力されたAOVsでは内容が変わっており、現状でUE4からの出力は限られており、RGBA、world position、depth、Diffuse Color、worldNomalの5種類しか出力出来ず、またvecterデータが出力されないのでモーションブラーも足せないため、UE4で出来ない部分はコンポジット側で行っています。カットを制作する前に、ライティングチームや、他のチームと相談して、V-Rayでレンダリングするかどうかや、UEの方がコストを削減できるからUEでやろうとか事前に話し合いました。イレギュラーで特殊なコンポジットをしなければいけないようなカットは、これまで通りV-Rayで行うなど、カットに応じて切り替えています。

  • ※V-RayのAOVs
  • ※UE4のAOVs
  • ※エフェクト素材
  • ※完成カット

機械学習を使用したコンポジットワーク

今回のコンポジット作業であまり例がない試みとして、Nuke13の機械学習の機能を使ったコンポジット作業を行っています。例えば顔が実写で身体がフル3DCGといったようなコンポジットが必要なカットで長尺の場合、1フレームずつマスクを切っていくのは非常に大変な作業になるので、機械学習の機能を使ってマスク処理を学習させて、自動的にマスクを作成するというようなことも行っています。その他にも肌の傷消しなどの作業も機械学習を使って効率化しています。
前作からブラッシュアップできる部分や、チャレンジできる部分を準備していたので、そこは実現できたのではないかと思います。
今後も、システマチックに出来る部分は機械学習などに任せて自動化し、画作りに対しては拘っていきたいので、クオリティアップに時間を割ければと思っています。