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CG MAKING

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デスノート(テレビドラマ)

2015年7月期連続ドラマ【死神CG制作】

番組CG制作フローにゲームエンジンを実装

開発部門の山口泰史氏、CG制作チームでプロジェクトリーダー的存在の三宅仁氏、そしてアンリアルエンジンを担当する渡辺伸次氏に制作現場の声を聞かせてもらった。「チーム自体がテレビシリーズを請け負うのは初めて」という中、週一ドラマでCGキャラクターを助演並みに登場させられるのもアンリアルがあったから、という。映画のCG制作当時は、1フレームに何十時間もレンダリングでかけていたものが、現在はリアルタイムで出せるようになった。

10年前の映画レベルにどこまで近づけるかの挑戦

渡辺

今回のように人間の姿に近いCGキャラクターが役者と随時からむというものを扱うのは初めてです。時間をかけたいところではあったのですが、テレビ制作のスケジュールに合わせるという厳しい部分があって。しかし原作(漫画)と映画が先にありますから、それらの世界観を壊わすわけにはいかない。今回の目指すところは、クオリティ重視というよりも、10年前の映画レベルにどこまで近づけるかに指標を置いていたので、限られた時間の中で (映画クオリティまで)どこまで詰められるのか、というのが今回のアンリアルの役目であったと思います。

三宅

もう最終のところまでタイムラグなく作業を行えるというのは、プリレンダーではできない醍醐味。特にライティングに関してはレンダリング時間が非常にかかるので。それをリアルタイムに反映させながら作業ができるのは大きな違いです。アンリアルによってレンダリングの工程は少なく出せますが、コンプ(合成)に関しては基本的には減らせないのです。それでも合成処理にかけられる時間も少ないため工程を減らしていかなければならず、大事な部分であるだけに辛かったですね。どこかでワークフローが破綻してしまったら、ドミノ倒しになる――切り詰めたノンストップのワークフローでのプレッシャーは、特に1話の納品では非常に張りつめていました。放送3日前でもリテイクをやっていて、30カットくらい戻ってきたりしました。当初は3~4人の担当者数で、1時間2カットのスピードで作業をまわしていました。

合成作業では、オリジナル素材(4K)を2K 8bitに変換してから作りこんでいます。リューク素材が8bitで出てくるので、それに合わせていますが、実写との馴染み具合が(解像度が低くて)非常に厳しい。加えて演出面でリュークをはっきりを見せたいということで、テレビスクリーンを意識してか全体的に明るくし、リューク周りのコントラストを上げて欲しいという要望がありました。

トライアンドエラーを乗り越えて続投

山口

今回、テンポを上げて進めていくためにゲームエンジンを選択したわけですが、ゲーム以外での使用例が少ない中で、作業をしながらゼロから経験値を蓄積していかなければならないリスクがありました。1週間の中でバグフィックスと仕上げをしなければならないという、トライアンドエラーが当初はきつかったですね。アンリアルではレンダリング時に自動で計算を端折って高速化するというのがデフォルトで組まれているようなので、1フレーム目にキャラクターが来ていないと、たとえば画面内に急に入ってくるシーンになると、表示されないという問題にぶち当たりました。プレビューでは表示されているのですが、レンダリングするといなくなるって(苦笑)。りんごが消えたとか、腰のチェーンが出てこないとか。そんなことがオンパレードでした。目標の納品日直前で、出てこない、出てこない、というトラブルが続き、非常にプレッシャーがかかりました。

渡辺

エンジン側で出来ないことがあるというよりも、今までMayaで作っていた自分たちのワークフローにリアルタイムで流したときに、それが成立しないということが多かった。今までのプリレンダーの置き換えでワークフローを進めてみたのです。Mayaでシミュレーションをせずに、アンリアルとモーションビルダーにダイレクトに持って行って完結するようなワークフローを構築しました。アセットはMayaで、そのあとはほぼモーションビルダーで作ってアンリアルに流していくという工程です。なので、シンプルにしたため、これが出来ない、あれが出来ない、という、ワークフロー全体の流れの中でのトラブルが発生しました。モデルデータは、映画のときのデータをリファインしているので、ゲーム用のデータとして最適化された形にはなっていない。それをアンリアルに持っていったときにどういうことが起こるかということをぶっつけ本番で行ったのです。

山口

ゲーム制作の中ではタブーなところとか、こういうことはしないよねっていうのも判らずにたくさんやっていました。

人数も日程も限られた境遇で仕上げた評価は

山口

話数をこなしていく中でワークフローと経験値は蓄積されてきて、だんだん早くスムーズに行えるようになってきました。今度はクオリティアップにもつながるのではないかと。そのうち、アンリアルの開発チームがマルチパスで16bitのまま連番で出力できるようなツールを開発してくれたら嬉しい。アンリアルの進化によってさらにクオリティが必然的にアップする期待もありますね。トラブルを解消するためにチームが悪戦したところもあってネガティブなムードもあったりしましたが、でも、これを機会に、DF内でもリアルタイムエンジンの活用に興味を持ってもらえばと思います。

渡辺

色々とアンリアルの機能を発揮できると思っています、今の時点でも。今回はキャラクターだけですが、背景にも使える。ゲームエンジンとしてのテクニックがあるので、そういったものを今後使うツールとして学んでいけば、もっと映像に組み込むCGとして高い表現ができるのかなと。表現としてはまだまだ、という部分もありますが、他社(ゲーム開発会社)だと、プラグインなどを使わずにアンリアルのデータとして工夫して作りこんでクリアしているので。そういった面では、自分たちもこれからより切磋琢磨していけたら、そしてDFのワークフローを生かしつつ今後も継続していけるフローを見出していけたらと思っています。それからリアルタイムエンジンを使いこなすというアプローチに加えて、いかにアンリアルをプリレンダーソフトに近づけられるかを、開発のチームに頑張ってもらっているところです。

三宅

クオリティ重視でないと、デザイナー達のテンションが落ちやすいのですが、今回の作業では「(時間の制約のなかで)どこまで究極にクオリティをあげていけるか」と、チーム一同頑張っています。テレビだと、自分がやった仕事がすぐに放送されるので、皆、わーっとなって、次の作業も頑張るぞっていう雰囲気を醸し出しています。週末で英気を養って、月曜日から新しい作業に取り組む、という一人ひとりが勇往邁進です。

DFのワークフローでなければ達成できなかった

CG制作でのアニメーションの役目は大きい。モーションキャプチャスタジオを保有し、外注に出さずともアニメーションを作りこめるパイプラインが確立している。ゲームエンジンの実装に加え、アニメーション制作チームが揃っていることはDFの強みであり、今回のプロジェクトを成功させているファクターの1つである。更にR&Dのショットデザインのスタッフがこれだけ揃っているプロダクションは国内にそう多くはない。ゲームエンジンがプリレンダーに代わってCG映像制作で活用できることが実証されたことで、今後CGアニメーションをテレビ番組で使う場面が増えるのではないかという期待も寄せられる。「従来の概念を覆す特例を世の中に出したという意味では、大いなる成果」と、豊嶋氏は語る。 のシステムで、従来のようにマーカーをつけるのではなく、顔の映像をヘッドマウントカメラで撮って動きを取り込む方法を採用。