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CG MAKING

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biohazard DAMNATION

2012年10月劇場公開作品【CG制作】

CG制作のポイント
回答者:CG ディレクター:土井 淳

2つの大きなテーマ

土井

『バイオハザード ダムネーション』を制作するにあたり、2つの大きなテーマがありました。臨場感を演出する事と立体感(奥行き感)を表現することです。

前作では朝・夜・室内と3つのシチュエーションでしかなかったのですが、本作は野外シーンが多かったので細かく時間経過を指定し、臨場感を演出して行くことを考えました。参考映像を集め、実際の光の動きを研究しながら、Maya上で照明を置いて最終的にどのような画像にするのかを決めました。そのため、最終的なコンポジット画像と殆ど変らない雰囲気に仕上がっていると思います。

また、表情が変わりやすい夕方は、さらに細かく時間設定をすることで臨場感を作っています。

キャラクターライティングに関しても同じように細かい指示画像を基に作業を進めています。よりキャラクターの存在感をアピールし、臨場感を演出するために表情や立体感を光で表現しています。

また、前作ではファイナルギャザーのチラつきが原因でドームライトを使用しましたが、その後は技術が進歩したり、社内のノウハウがたまって来たりで、本作ではHDRIを採用しています。

ライトごとにカラー素材を用意することによって肌の透明感を表現することができました。なので、前作と比べ素材の量は倍ぐらい膨らんでいます。1キャラクター平均20素材ぐらいです。

本作では、奥行き間を表現するため、フォグを重視しています。

奥行きを調整できるようにするため、RGBでレイヤー分けした素材を用意しています。また、フォグをチャンネル分けすることで、手前と奥のフォグの濃さを調整することが可能です。また、粒子も同じように分けて調整しています。

臨場感を出すためには、観ている人に感情移入させる必要があります。そのために、CGキャラクターに人間臭さ・感情豊かな表情をつけています。リアリティーのある表情をつけるために、フェイシャルキャプチャーを使っています。キャプチャーしたデータをロケーターに流し込み、オフセットコントローラーで、カットに合わせた表情付けをしています。このコントローラーは、表情筋を元にセットアップされたジョイントをコントロールしているので、自然で細かな表情・筋肉の動きを表現することが可能となっています。

ショットグレイクダウンの一例

01 背景をひと通りプリコンプした状態。背景は1素材のみで画として成り立つカラー素材をベースにしているが、アンビエントや映りこみなどが別途用意された。

02 モブキャラを追加し、それに伴う影や映りこみなども合成。

03 メインキャラを追加し、それに伴う影や映りこみなども合成。

04 ひと通りの素材を合成した上で、演出上明暗をつけたい部分や、馴染みの調整を行った状態。

05 エフェクトを追加。遠近や、光の当り具合によってRGBに分けられており、奥行きに応じて濃さの調整や2Dベースのライティング調整が可能。

06 ベクターやデプスを使用してモーションブラーやディフォーカスを調整後、全体的なカラーコレクションを行い、完成。

マズルのエフェクト

「バイオハザード ダムネーション」では数多く乱射シーンがあります。各キャラクターが持つ銃に個性を出すため、フラッシュハイダーに合わせた、マズルフラッシュのプリセットを作っています。フラッシュハイダーとは、銃の先端に付いているマズルフラッシュの発生を制御するための装置です。銃のタイプに合わせて、マズルフラッシュが表示されます。

また、周りの素材によって着弾の様子は異なります。これは各素材(コンクリート、金属、ガラス、木材)の表面に当たった場合をシミュレーションしています。

混在する2つのソフトウェアとAlembic for 3ds Maxの開発経緯

DFでは通常Mayaを使用していますが、今作は背景の制作に3dsMaxを使用しました。異なる二つのソフトの掛け橋としてAlembicを導入しました。 AlembicとはSony Pictures ImageworksとLucas Filmが共同開発して、2010年にオープンソースとしてリリースされたファイルフォーマットです。 AlembicはMayaに関しては2012年から標準で搭載されていますが、3dsMaxの方は標準ではなかったため、DF独自でこのプロジェクトのために開発することになりました。このAlembicを開発したおかげでキャッシュ周りの問題の多くが解消できました。

プラグインのダウンロードはこちら

Alembicは、オープンソースであり、より多くの方に使って頂くことが業界全体にとってメリットがあると考え、「Alembic for 3ds Max」を無償公開することにしました。また、使用の様子も動画で公開していますので、皆様にご活用いただければと思います。Alembicを使用した場合のメリットとしては、下記が挙げられます。

■Mayaのジオメトリキャッシュよりも高速に再生できる。
■3ds Maxの場合は、FBXよりも再生スピードが速い。
■1000本以上のNURBSカーブを全てAlembicのキャッシュとして書き出してもMayaの中で読み込んで、再生することが可能。

しかし、デメリットもあります。標準だとファイルサイズが大きいことやマルチUVにまだ対応していないことや若干バグがあることが挙げられます。
今後は、これらの問題についても解消をしていきアップデートしていく予定です。